地球微生物学者の高井研氏は深海熱水噴出孔のことを「砂漠の中に
突如として現れたラスベガス」という例えを使って表現しています。
水深200mを超えると太陽光はほとんど届かないため
植物プランクトンは光合成ができません。
そのため深海では常に栄養が不足しているので生物にとって
とても厳しい環境になっています。
それにもかかわらず深海熱水噴出孔の周囲には驚くほど
多くの生物が存在しています。
深海熱水噴出孔から出る熱水には、鉄・銅・亜鉛などの重金属元素。
水素・メタン・硫化水素などの火山ガス成分などが含まれています。
この中で生物にとって重要なのが水素・メタン・硫化水素です。
これらの物質を利用して有機物を合成できる微生物がいます。
この化学合成微生物と呼ばれる微生物の存在によって深海熱水噴出孔の
周囲には豊かな生態系が広がっています。
光がなくても存在できる生物がいるなんて想像もしていなかったので
このことを知ったときはとても驚きました。
私にとって光がなくても生きていける化学合成微生物は魅力的な生物です。
人には光はなくてはならないものですが、人生においても同じだと思います。
私の人生においての光とは「自分らしく生きること」になります。
生きる意味を見失ってしまったり、人生に絶望してしまったときに
光がなくても生きていける化学合成微生物の存在が、苦しい時期を
穏やかに過ごすためのヒントを与えてくれそうな感じがしています。
化学合成微生物が存在する熱水噴出孔は光も届かない、しかも熱水の温度も
水圧の影響で300℃を超えるようなとても厳しい環境です。
しかし彼らにとってそんな過酷な環境で生きていくことは自然なことなのでしょう。
ただ彼らが今の環境に適応するまでには、どれほどの年月と試行錯誤が
必要だったのでしょうか。
彼らが生きていた38億年前の地球で体験してきた、膨大な試行錯誤の記憶が
私の中にも組み込まれていると思うと何とも言えない不思議な気持ちになります。
これから生活していくなかで何か困ったことがあるときは、
彼らを見習って試行錯誤を繰り返すことを忘れないようにしていきたいと思います。